<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第244章 生きている、生きていて。 ― 姫&秀吉 ―
秀吉さんは世話を焼くのが好きなのに、自分自身では無茶をする。
「もう…っ、わかるけど…っ、わかるけど無茶はしないで…っ」
戦から帰ってきた秀吉さんは、刀を折られて斬られそうになった家臣を守ろうとして、自分が怪我をして帰ってきた。
私は怪我をした腕に、家康が調合した塗り薬をべったりと塗り付け、無茶をしないでと叫びながら包帯を巻いているところだ。
「悪かった。でも家臣を守りたかったから仕方ないだろう?今回は許してくれ。な?」
にこにこしながら頭を下げる秀吉さんに、許せないとは言えないし、私が許さないと言えないのをわかっている秀吉さんもずるい。
「うっ…もう…っ」
仕方ないと私は巻き終えた包帯の上から、わざと傷口をパンと叩いて言った。
「そういう理由なら仕方ないから許してあげる。でも次は無いからね」
「…ってぇ。舞、傷口を強く叩くの止めてくれ」
秀吉さんはうめきながら傷口を、怪我をしていない手で押さえる。
私は知らない、と言わんばかりにそっぽを向き「私は痛くないから叩いても気にならないよ」と言う。
「…あのなぁ…舞…」
秀吉さんは腕を押さえたまま呆れ声で言うけれど、私は内心無茶をする秀吉さんを怒っている。
そりゃあ、家臣を守って怪我をするなんて秀吉さんらしいと思う。