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<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹

第241章 食べてくれて、ありがとう。  ― 姫&元就 ―


それでも、少しずつ信用してもらえれば良いかな、と私は思う。

「どんな理由でも、私の作ったものを食べてもらえるのは嬉しいです」

元就さんは私の言葉に「ふん」と横を向いてしまったものの、目の前のお皿はいつも間にか空になっていた。

良かった、食べてもらえた、それだけで私はほわほわと嬉しくなって、つい笑顔になる。

無理やり連れてこられたはずなのに、今では元就さんが喜んでくれると嬉しい。

なんでだろう、でも、心の底では、この感情の答えは出ている。

まだ、それを自覚したくなくて、自分で心にふたをしているけれど、いつかこの思いがこぼれてくる、それはそう遠くない先に。

元就さんにとっては今の私はただの奴隷のような存在だけど、そうではない目でいつかは見て欲しい。

少しずつ距離を縮めて…私のこの気持ちを伝えられる日が来るといいな、と思う。

私は元就さんの空になったお皿を手にし、洗い桶に入れる。

今度は何を作ろうかな、現代とは食材や調味料が違うから全く同じものは作れないけれど、似たものなら工夫すれば作れるかもしれないと今から考えてしまう。

「なんだ、ご機嫌だな。皿洗いが好きなのか?」

元就さんがお皿を洗った私を見て言うので、私は言い返す。

「そうじゃないですよ。今度は何を作ろうかなって考えてるんです」

「そうか、食えるもん、作れよ」

元就さんに言われるけれど、これはきっと期待しているんだよね。

「任せてください」

私は元就さんに笑いながら答える。

この気持ちに気付かない振りをして、私は明日も料理を作る。

少しずつ、私の料理で気持ちが寄り添えると良いな、と思いつつ。


<終>
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