<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第239章 花冠 ―信長&姫 ―
晴れて青い空の下、俺は舞を前に乗せて馬を走らせていた。
「もうすぐ着く」
短く言って、何も言わずに馬に乗せて連れてきた舞を安心させるものの、すぐに目的地に到着した。
「わぁ…綺麗…」
一面に春の花の咲く場所を見付け、舞に見せてやろうと思い、今朝になって天気の良さに連れて行くのを決め、秀吉の「護衛をつけてください」の声を振り切り、舞を連れて来たのだが、正解だったようだ。
「信長様、こんな綺麗なところに連れてきてくださって、ありがとうございます」
満面の笑顔で俺に礼を言う舞は、そのまま一人で花の中へ走っていき、なにやら一輪ずつ摘んで作り出した。
俺はそんな舞の様子を見ながら、馬を近くの大きな木の下につなぎ、馬はその場で頭を下げ草を食み始めた。
それを見て舞へ寄っていくと、舞は俺に気付いて手にしているものを見せる。
「ふふっ。信長様、ちょっと待っていてくださいね」
何やら作っているようだが俺には検討がつかない。
この娘が何を見せるのか、楽しみにしながら俺はごろりとその場で横になった。
「…信長様…」
うらうらと陽にあたって横になっているうちに、少し眠ってしまったらしい。
舞に声を掛けられ目を開けると、舞が覗き込んでいた。