<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第237章 White special day ― 武将&姫 ―
<顕如の場合>
「顕如さんもいらしてたのですか?」
安土城には似つかわしくない人物が舞の前に居た。
「ああ。越後の龍の懐刀が私のところに話しに来たのだ。おまえをもてなす会を開く、とな」
舞は「わざわざありがとうございます」と言って微笑み、その笑みを見た顕如は口角を少し上げ笑みを浮かべたように舞には見えた。
「この会はくらぶ乱世と言うらしい。あの懐刀がなにやら説明したが、私にはようわからぬ」
顕如の言葉に舞は驚きつつ言った。
「そうなのですか?それなのに来てくださったの?」
「ああ、何せおまえをもてなす会と言われたら来ぬ訳には参らぬだろう」
顕如がそれでも穏やかな表情を見せている事に舞は安堵する。
「顕如さん…私のために本当にありがとうございます」
「気にするな、私がしたいから、しているだけだ」
そして顕如が舞に膳や杯を寄越すのだが、その指先の動きがしなやかでじっと見ていると舞は何故かぞくりとしてくる。
指の動きがねっとりと厭らしい感じがする、と舞が思い切って言うと、「指の動きが厭らしいとは…私のこの手は復讐の為にあるというのに、舞は何を想像しているのだ?」と顕如が少しいたずらっぽい笑みを見せる。
「顕如…さんが…欲しいな…」と大胆に話す舞に、顕如は無言でそっと手を添える。
二人の甘い一夜はこうして始まるのだった。
<終>