<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第235章 愛は昇華する ― 姫&謙信 ―
謙信様がいらっしゃるのを見付けて、私は近寄る。
「謙信様」
声を掛けてこちらに気付くと、整った薄い唇の端が心持ち持ち上がる。
「舞、どうした」
私に向けられるその優しい穏やかな笑顔は、いつも歪な愛に満ちているけれど、それが嬉しいと思ってしまう私も、謙信様の愛に捕らわれているのかもしれない。
「今、良いですか?」と聞くと、小さく頷くその姿を見て隣に立つ。
「もうすぐ謙信様のお誕生日ですけど、何か欲しいものはないかなって」
少し斜めに顔をあげて謙信様の整った横顔を見ると、謙信様はこちらを見てくださる。
「俺には特に欲しいものは無いな…おまえがいつも隣にこうしていてくれればそれで十分だ」
ああ、もう、どうして謙信様はこう、平然と私が恥ずかしくなるような言葉を寄越してくださるのか。
謙信様の言葉に瞬時に赤くなる私を見て、くすりと笑い謙信様は少し背をかがめて私に口付けた。
「けっ…謙信様…ここ…外、です…」
驚いた私は人目があるので、と遠回しに言うけれど、謙信様は全く動ぜず「舞が愛らしいのだから仕方ないだろう」とさらりと言いのける。
嬉しいけれど恥ずかしいのがやっぱり勝る私には、謙信様の行動にはまだ慣れていないのかもしれない。