<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第23章 ためいき ― 幸村&佐助 ―
俺は安土城下の市で行商をする。
行商は隠れ蓑で、実際は安土を調査する身だ。
行商の品はおんなものの小物。
勿論、俺が調達したんじゃない。
俺の、おんな好きな上司が用意したんだ。
「この櫛、見せてもらって良い?おにいさん」
「どうぞ」
ややぶっきらぼうに答えるが、娘はニコっとしながら櫛を手にし、結い上げた髪のあちこちに挿す真似をし、一緒にいた恋仲らしいおとこにその姿を見せる。
「ねぇ、どう?」
「悪くねぇ。だが、俺はこっちが似合うと思うぜ」
男は別な櫛を手にし、娘の髪に当てて満足そうな笑みを浮かべる。
「そう?じゃあ、貴方が選んでくれたほうにする」
「にいさん、これ、頼む」
「はい」
おとこから櫛を受け取り、紙に簡単に包む。
銅貨を受け取り、櫛を渡す。