<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第229章 ねこさんの言葉 ― 三成&姫 ―
それに気付いたのはある夜。
ミツナリさまのお布団に入れてもらおうとお部屋の前に行ったら、お部屋の中からまるであたしたち牝猫が発情している時のような声が聞こえてきたの。
他の牝猫をミツナリさまが可愛がっているのかとびっくりしたけれど、そのまま黙っていて気付いたの。
これは猫じゃなくてニンゲンのおんなの発情している声だって。
ミツナリさまはどれだけ綺麗でも、やっぱりニンゲンのおとこだ、ってはっきりこのとき思い知らされたわ。
でもあたしはがんばる。
ミツナリさまの懐に入れるのは猫だからこそだもの。
だからニンゲンのおんなと交尾してても、お布団に入り込んで邪魔してやるわ。
ある日、ミツナリさまのお部屋に入っていったら、お部屋にニンゲンのおんながいたの。
このおんなが、ミツナリさまと交尾しているおんなだと気付いて、引っ掻いてやろうかと思っていたのだけど、このおんな、猫の扱いを知っているらしく、あたしの顎を撫でて、ミツナリさまと同じようにあたしを「ねこさん」と呼んで可愛がってくれると気付いたわ。
ミツナリさまはあたしだけのミツナリさま。
そう思ってきたから本当は悔しい。
でもあたしは、猫。
ミツナリさまとは対等には何も出来ない。
だから、ニンゲンのおんなに言うわ。
良い?ミツナリさまを幸せにしてくれなかったら思い切り引っ掻くからね。
<終>