<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第22章 愛の刃 ― 謙信&姫 ―
「舞」
俺は愛する女の名を呼ぶ。
「はい、謙信様」
舞は俺を膝枕し、髪を撫でながら返事をする。
このような穏やかな日が、俺に訪れるとは思わなかった。
俺は伊勢姫を忘れる事はない。
俺が初めて愛し、俺の未熟さ故、守れなかった命。
俺は女と関わるのは止めた。
しかし舞が俺の凍てつく心を溶かし、伊勢姫の呪縛を解いてくれた。
俺が物狂おしく舞を求めても、おまえは全身を持って俺に答える。
お前が愛しく、お前を手放す事なぞ、出来ぬ。
膝枕されたまま、手を伸ばし、舞の頬を撫ぜる。
「どうしたんですか?」
舞は甘い微笑みで俺に答える。
おまえを寄越せ。俺はおまえがいつでも欲しい。
俺は膝枕からからだを起こし、舞を引き寄せる。