<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第223章 イケ戦テーマ曲 ― 姫&信長 ―
この時代、まだ無いものが数多くある。
「笙…尺八…横笛…あれはまだ無いんだ…」
私の中で『無い』と言っているのはいわゆる鍵盤楽器。
そういや雅楽で使われる楽器って吹くものばかりだよね。
どこまで出来るかなぁ、こどもの頃習っていたピアノの知識を拾い出し、祝いの宴の席で演奏させるからと、何故か私は曲を作っているのだ。
手書きで五線を引き、使う楽器を決め、頭の中で必死に音符をつなぎあわせる。
主旋律はどうしよう、そうだ、打楽器でリズムを打っていかないと。
和太鼓でいいかな、あ、お琴、琴があるとメロディに幅が広がるかな。
ピアノがあれば確認出来るのになぁ、信長様に「記念に一曲つくります」なんて言ってしまったからには、絶対完成させないとならないからね。
それでも何とかこうにか出来上がるが、よく考えたら楽譜上は出来ていても、このように演奏者のかたがこの曲を吹けるのか、と、気になってしまった。
だって雅楽のようなのんびりした曲じゃなくて、テンポも早いから息継ぎや指を動せるのかと気掛かりだった。
短いけれど何とか作り上げ、信長様のところへ手製の楽譜を持って行った。
「ほう、出来たのか」
楽譜を見ると当然だけれど、初めてみたおたまじゃくしに首を傾げていらっしゃる。
その様子がかなり可愛くて、私は小さくくすりと、一人でこっそり笑ったものの、いけない、言わないとならない事があった。
「信長様、私の考えたものはこの時代のものと早さが全く違います。そして音もたくさん短い間に使うので、演奏者のかたが出来るか気掛かりなんです」
「それならそれぞれの演者は、一番の技を持つ者にさせる」