<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第21章 イケメン戦国英雄伝説序章 ― 全武将 ―
安土城全てをハロウィン仕様にするには広すぎて無理だったようで、広間だけそれらしい飾りを舞が工夫して作り上げた。
橙色と黄色と茶色の布を組み合わせて、ざっくりと縫っただけのようだが、明らかにハロウィンの色彩に広間が染められている。
かぼちゃも大きい西洋かぼちゃはこの時代には無いので、かぼちゃの絵を舞が描いて飾っていた。
ぞろぞろと広間に集まった武将達は、広間を見回し、その独特の飾りつけに感心する。
「橙と黄と茶の三色がはろうぃん色と言うことか」
義元が温かみのある色彩に目を細めて、手にした扇で反対側の手をぽんと叩く。
「座ってください。劇の前にお菓子とお茶をどうぞ」
前回、全武将を叱った時はうってかわって、笑顔で今日は声を掛け、舞は座った人から菓子と茶を配っていく。
茶はともかく、菓子が橙色をしているまんじゅうだった。
「政宗が考えた、かぼちゃ入りのおまんじゅうですよ」
舞が言うと、政宗がふふんと鼻高々な表情をする。
「野菜入りのまんじゅうは初めてだろ?味をしっかり堪能してくれ」
わいわいと武将達が菓子と茶を楽しみ、そしていよいよ全員が最後まで訳がわからないまま、舞の為に必死に苦労して稽古した劇が披露される。
「皆さま!楽しみにしてます!!」
舞の満面の笑顔。
そう、それが見たかった。
全員の願いが叶い、幕を開ける-
<終>