<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第221章 陰陽師のひみつ ― 光秀&姫 ―
舞は顔を赤くしたまま、左右にぶんぶんと振る。
「いやっ、ちょっと、それはっ、えんりょ、しますっ」
慌てる舞に耐えきれずに光秀は破顔し、その少年のような顔に舞は顔を赤くしたままどきりとする。
「では、朱雀が残念がるが戻るとしよう」
笑ったままの光秀が手を差し出しながら立ち上がるので、その手に自分の手を重ね舞も立ち上がる。
そのまま手をひかれ部屋を後にするが、舞は去り際、もう一度御簾の奥の、寝具の置かれた場所を顧みる。
『光秀様には奥様がいたかもしれないんだ…』
何故かその事がちくりと自分の胸に小さく刺さる。
『奥様がもしいらしたら、私はこの時代に来た時、拾われる事すらなかったのかもしれないかな…』
そんな事を考えながら廊下を歩く舞に、光秀は心を読んだように言う。
「何を考えてる。俺に妻女がいたら、おまえを出会った時拾わなかったとでも考えていたか」
「え…うわ…どうし、て…」
驚いて立ち止まり、隣を歩く光秀を見上げる。
「おまえのその小さな頭で考える事なぞ御見通しだ。俺に妻女がいたとしても、俺はおまえをちゃんとここへ連れてきていたから安心しろ」
「…どうして…」
「おまえは今は俺の立派な助手だからな」