<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第221章 陰陽師のひみつ ― 光秀&姫 ―
「もう、朱雀ったら開けてよ!」
舞は閉じ込められてしまっていた。
「まぁまぁ舞様、助けはきますから待っていてくださいな」
すりすりと床を擦って歩く独特な歩みで去ってゆく朱雀に、舞は声をあげる。
「ちょっとぉ、開けてよ!置いていかないで!」
しかし朱雀は去ってしまい、仕方なく舞はその場に膝を抱えて座り込んだ。
「もう…私が何をしたのよ…」
舞は何か失敗をして朱雀に怒られたのかと思ったのだが、どうしても失敗が何かわからない。
「札の字を間違えたのかなぁ。でも最近はどれがどの札かわかるようになったから、それで字を間違えたって事は無いと思うんだけどなぁ…」
朱雀は去る前に、助けは来ると言ったが、どうみても御殿の隅に作られたその部屋に誰かが気付いて助けに来てくれるとは思えない。
「困ったなぁ…でも、朱雀が来てくれるよね…」
そのまま目を閉じ、うつらうつらと舞は寝てしまった。
時間にしてどのくらいだろうか。
何か音が聞こえて舞は目をこじ開ける。
がたがたと木の引き戸を開ける音がし、からりと開くと低く艶やかな声がいつもとは違う余裕の無い声で舞の名を呼んだ。