<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第219章 いつでも愛する ― 幸村&姫 ―
「わぁ、海だ」
舞は満面の笑顔で馬を操るこちらを振り向いた。
「幸村、連れてきてくれてありがとう」
「嬉しそうだな」
声からしても嬉しそうな舞に、何がそんなに喜ぶ理由になっているのかわからない俺は、それでもこいつが喜んでいるなら良いか、と思う。
馬を走らせる速度を落として大きな木の陰に馬を繋ぐ。
「俺、近くの家に行って、馬の水をもらってくるから待っていられるか?」
途中で見掛けた民家へ水をもらいに行ってくる間、待っていてくれ、と声を掛ける。
「うん、大丈夫だよ、ここで待ってるね」
にこにこしている舞に、俺は不意打ちの口付けをさっと落とした。
「ん…幸村ったら…!」
一瞬の事に目をぱちくりさせる舞に、俺はからりと笑って水をもらいに走った。
水を桶に入れてもらい戻ると、馬のすぐ横に座りこんだ舞はこくりこくりと舟を漕いでいた。
まぁ城を出るの、早かったからな、無理もないか。
そう思いつつ無防備すぎる舞に少しだけ仕置きをしてやらないとな、という思いが沸いてくるのを感じた。