<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第215章 貴様を捕らえる ― 信長&姫 ―
妙な娘だ。
俺は本陣の隅でひざを抱えて震える舞を見やる。
俺を、燃える本能寺の中から助けた強者かと思いきや、戦の真っただ中なここでは、何も出来ない赤子の様にうっすらと涙を浮かべている。
「俺をあの本能寺で助けた割りに、どうしてそんなに震えているのだ」
俺が話し掛けると震えながらも言ってくるが、語尾もはっきりせず顔は青いままだ。
「あの時はたまたま…というか考える前にからだが動いたんです…こんな…戦なんて…初めてですし…」
近くで刀同士が相対する音が聞こえ、舞は小さく「ひぃ」と叫び声をあげる。
火の中を突っ込んできたおんなが、戦を本当に怖がっているのが不可思議だ。
「安心しろ、貴様は俺の側にいれば何人たりとも手は出させんからな」
俺はにやりと片頬で笑いながら安心するように言ってやると、青白い顔をしたまま小さく舞は頷いた。
そして安土に戻っても不可思議な言動は続く。
俺の夜伽を嫌がるおんなはまず居ないのだが、ずっとせぬと言うのだ。
あまりに俺の周囲に居るおんなたちとは違う存在に俺は興味を持ち、俺に惚れさせて俺から離れさせなくしてやろうと思い、囲碁で勝負をする事にした。
そして知る舞の秘密は、この時代の者ではなく、遠い未来から偶然にも来てしまった、この時代の最終状況を知るおんなだった。