<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第214章 風邪 ― 秀吉&姫 ―
舞は叫ぶように言いつつ、でも、もう一度俺の側に寄ってくると横に座った。
そして顔を近付けてきたと思ったら、俺の頬に口付けた。
「今はここまでね。後は治ってからだよっ」
赤い顔のままそう言うと立ち上がり、こちらを見向きもせず襖を開けて部屋を出て行った。
俺はその様子をぽかんとしたまま見送り、そして舞の表情を思い出す。
「あーあ、本当に可愛いな、舞は」
そして俺の邪な心が揺らめく。
「早くこの風邪を治して、あいつをめいっぱい可愛がりたいものだな」
小さくあくびをするが、家康の薬が効いてきたのだろうか。
「さて、眠るか」
目をつむると、あっという間に眠りに落ちそうになるのが自分でもわかった。
舞の言っていた『良薬口に苦し』とやらか。
じゃあ、それを信じるとしよう。
治ったら甘やかしてやるからな、内心舞に言い眠りにつく。
夢で舞の肌に俺の所有痕をめいっぱい付けていたのは、俺だけの秘密だ。
全く夢でも舞を可愛がっているなんて知ったら、あいつはどう思うやら。
一日舞に触れなかっただけで、こんな状態だなんて、俺は相当舞に惚れているらしい。
そんな自分に苦笑し、もう一度眠りについた。
<終>