第213章 物が吉い　― 家康＆姫 ―

「まぁ、考えはいろいろだし、俺は神を見た事が無いから、何とも言えない」

「そうだよねぇ、あっ、わかった！」

突然舞が大きく声をあげたので、家康は目を丸くする。

「なっ…どうした？」

緊張した面差しになって舞に問う。

「うん、家康の物吉貞宗の事を聞いて、そういえば信長様も私の事、お守り代わりにしてるんだっけって思い出したの」

「ああ、そう言えばそんな事言っていたね。あんた、自分はお守り代わりかって怒っていたっけ」

その頃の事を思い出して、家康はくすくす笑い、舞は顔を赤くする。

「ちょっと…思い出さなくても良いじゃない。それに笑わなくても…むぅ」

可愛らしく頬をふくらませる舞に、家康は自分の両手で舞の頬をはさむ。

「全くあんたってどうしてそんなに可愛い態度をとるんだろう」

家康に言われ至近距離に寄られて頬をはさまれ、舞は顔を赤くする。



「主ってば、さりげなく口説いてる」

その様子を見ていた物吉貞宗は、くすくすと鞘の中から笑みをこぼす。

「こうやって女人を口説けば良いんだね」

寝そべって両足をぱたぱたと動かして見ていた物吉。

「あ、そろそろ見ちゃ駄目かな」

家康が舞を押し倒したのを見て、物吉は意識を本丸へ飛ばす。