<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第212章 海にて ― 信玄&姫 ―
連れてきた海の風は、まだほんの少し冷たい。
俺は舞を抱き寄せて、ぴったりからだをくっつけながら歩く。
「信玄様、これくらい大丈夫ですよ」
舞はにっこり笑って言うが、俺にはそんな事はさせられない。
「駄目だよ、おんなのこが身体を冷やしちゃいけないな」
くっつけあったところから、互いのからだの熱を感じる。
ああ、柔らかくて温かい舞のぬくもりに、俺の理性はいつまで耐えられるかな。
なんて事を思いながら、砂浜を二人で歩くと、何か見付けたのか舞はかがんで砂に手を伸ばした。
「信玄様、桜貝です。この辺りで見付ける事が出来るんですね」
小さな桃色の爪のような貝は、まるで舞の爪を思わせるようだ。
「俺は貝もきみの爪も同じくらい可愛く見えるよ」
舞の肩を抱き寄せ、耳元でそっと囁くと瞬時に頬を赤くする舞。
「もう…信玄様ったら相変わらず冗談がお上手なんですから…」
「おいおい、そういう事でからかったりはしないな、俺は。俺は本心を言っただけだぞ」
肩をすくめながら言うと、舞は益々顔を赤くする。
「も…もう…信玄様ったら本当に女性を褒めるのがうまいですよね」