<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第206章 乙女解剖 ― 姫&武将 ―
私はあの人に裏切られていた。
そう、目の前の光景に、思う。
目の前で行われているのは、あの人とある大名のお姫さまの婚儀。
「舞、俺はおまえだけを愛してる」
そう言ってくれたはずだよね、でも、あの人が選んだのは、違う女性。
「あれは仕方無い。互いの領土を守るための婚儀だからな」
政略結婚なんだ…でもそれなら、私は織田家ゆかりの姫という扱いだよ?私を選んでくれても良かったんじゃないの?そんな考えが頭を巡る。
私を愛してると言ったのは嘘だったって事でしょう?
「おまえだけ…舞だけ…愛してるのは舞だけだ…」
そう言って抱いたのは嘘だったの?
あの人に愛されている、あの人に恋している、私だけが思っていたのかな。
その時は本当だったのかもしれないけれど、この目の前で起きている事が、全ての愛の言葉は嘘で塗り固められていたのをものがたる。
違う?何が違うの?私の期待を外したあの人との夢。
寸寸(すんずん)された心は、もう恋はしたくないと叫んでる。
気が付いたらあの人を好きすぎて、私の好きの心とどこか逃げたくてならない。
狂おしいあの人への愛をどこかへ捨ててこないと、私は心を保てないよ…