<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第203章 めぐり逢う ― 三成&姫 ―
私が言うと、はっとして顔をあげ、私の顔を見ました。
「…ごめんなさい。私…あのひとを…」
ようやく舞様のくちから聞けました。
「…わかりました。では安土城へいちど戻ってください。そしてあのかたのところへ行かれると良いでしょう。私が信長様へ文を書きます」
私もきっとひどい顔をしているでしょう。
でも舞様、貴女を苦しめたくない、その気持ちが優先しています。
「…ごめんなさい…ごめんなさい…」
貴女からは愛の言葉を常に聞いていたかったです。
そして、貴女の去られた私の心には何か寂しい風が吹くのです。
でも木々の芽吹く季節が来て、予感がなにやらありそうです。
私への新しい誰かとの出会い。
それはあくまでただの願望ですが、自分の心の底が暖かくなるのです。
秀吉様の御殿で見掛けた、木刀を振る女性。
同じかたですね、水を汲むのが上手ではないようで、苦労していらした。
正面で見たその顔は、貴女と違った愛らしさをもつ不思議な印象。
私はこのかたに惹かれ、このかたも私に惹かれる。
そして私は新たな恋を引き寄せます。
舞様、私はもう、大丈夫です。
<終>