<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第194章 気分は花丸 ― 姫&信長 ―
信長様に聞かれるので伝える。
「信長様と一緒に出掛けられるのが嬉しいんです」
弾んだ私の声からもわかるのか、信長様はくっ、と笑われる。
「貴様は本当に…正直で愛らしいな」
「もう…また信長様の冗談が出てますね」
信長様の言に、いつものからかいかと思ったけれど、信長様は違うとおっしゃった。
「貴様を愛すればこそ、からかいなぞしたつもりはない」
たぶん真顔でおっしゃっていると思うけれど、単刀直入に言われると嬉しくて恥ずかしくなり、私の顔は赤くなっているのではないかと思う。
「どうした?疲れたか?」
私が無言になったので、信長様が気遣ってくださる。
「あ、いえ、大丈夫です。そのぅ…信長様、嬉しいんです、愛すればこそとおっしゃってくださって」
私が言うと、信長様は意味がわからないというように「ん?」と首をかしげたようだった。
「冗談ではなく、いつも私を愛してくださるというのが嬉しいんです」
「当然だ、俺は貴様の『かれし』なのだからな」
破顔して笑われる信長様に、私はやっぱりこのかたには勝てないなぁと思う。
大胆で緻密、冷酷なのに愛情豊か、反する感情をうまく両立させている。
馬は走り続け、どこに連れて行ってくださるかわからないけれど、到着したら顔を見て、遠出に連れてきてくださったお礼に、口付けを贈ろう、そう私は決めた。
<終>