<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第188章 偽り ― 姫&信長 ―
言わなくて良いの、貴方の心に私は居ない。
「愛してる」
私は貴方と睦み合う度、貴方へ言うけれど、貴方からは同じ言葉は聞かれない。
貴方のひどく冷たい表情に惹かれ、でも二人きりの時の貴方の手はひどく優しい。
私は貴方に抱かれる度、傷付くだけ。
だけれど、貴方を愛してる、焦がれる程、愛してる。
私をだましてくれて構わない。
あの時だけ、優しい目を向けて、優しい腕で抱きしめて、優しい言葉を掛けて。
貴方の心にあるのは、この世の中を統一する事。
だから余計なものは心に留めないのでしょう?
「貴様は俺の褥を暖めていれば良い。貴様は俺の持ち物で縁起物だからな」
貴方の言葉は冷たく私の心に突き刺さる。
そうね、本能寺で貴方を助けてしまったのが私の運命の転換だった。
助けなかったら、貴方も私もどうなっていたのかしら?
助けたから、貴方は私を縁起物として安土城へ留め、戦場にも連れて行かされた。
何もわからないまま、戦場では怪我をされた兵士たちの世話をしたわ。
戦場では目の前で大怪我の為、亡くなる人もいた。