<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第187章 酒と梅干し ― 謙信&姫 ―
「お誕生日おめでとうございます、謙信様」
目の前に出されたのは酒と梅干しという、いつもの組み合わせが盆に載せられている。
俺の表情に変化が無いのに気付いた舞が問う。
「あの…謙信様、何か…?」
「ああ…これはいつもの酒と梅干しだろう?」
舞は俺の言いたい事に気付いたようで、俺を見ながら微笑んだ。
「いつもと同じに見えますでしょう?でも中身は違うんです。お酒は特別に用意した辛口のほとんど出回っていないもので、梅干しも特別な工程で作られた珍しいものです。謙信様のお誕生日に合わせて探したんです」
俺は探したという言葉にまゆを寄せる。
何故なら、春日山で売られている酒と梅干しは全て把握していて、舞が探して新たに見付けられるものでは無いからだ。
「あ、えっと、ここではなくて、少し前に佐助くんが安土に行ったので、その時に探してもらったんです」
俺が指摘すると舞は安土で探した、という事を言っていいのかちゅうちょしつつも、俺には隠しきれないと正直に口にする。
安土で探した酒と梅干しか、正直面白くない。
だが舞が佐助を使ってまで探した逸品との事、さぞ美味いのだろう。
置かれた盆の杯を取り上げ舞に言う。