<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第182章 Mon amour ― 姫&信玄 ―
目を覚ますと、佐助くんの不安げな眼差しが私を覗き込んでいた。
「…佐助、くん…ここは…」
「戦国へ無事に戻ってきたようだよ」
佐助くんに言われ、ゆっくりと起き上がると、目の前に見覚えのある建物。
「本能寺…」
焼失した後、信長様によって再建されたと聞く本能寺が、かがり火の中に浮かぶ。
「でも…何年なのか…もしかしたら以前より前とか…後の年代とか…」
年代をずれてしまっていたら戻ってきた意味が無い。
佐助くんは少し口角をあげて笑みを浮かべる。
「大丈夫だ、きみをここに運ぶ時に、様子をみていて同じ時に戻ってきたのは確認した」
「そうなんだ、ありがとう…」
「夜が明けたら春日山へ戻ろう」
待ってて、信玄様、貴方に会うため、戻ってきたの。
私の大切な人、愛する人。
「佐助くん、行こう、春日山へ。謙信様、幸村、そして信玄様…みんなが待ってる」
頷く佐助くんと夜が明け始めた京を背にし、馬を駆って春日山へ走る。
「俺の天女、戻ってくると信じていたよ」
ええ、信玄様、待っていて、もうすぐ、貴方の腕の中へ飛びこむから。
<終>