<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第178章 舞う ― 信長&姫 ―
「…信長様は鬼先生です」
舞の練習を中断し、二人で茶を飲みながら舞は言う。
「なんだ?しかし、その鬼に惚れてるのは貴様だろう」
共に出された羊羹を口にして、信長は片頬をにやりとあげる。
「う…それは…そうなんですけど…」
信長に突っ込まれへどもどする舞に、信長は平然と言う。
「そんなに疲れきっていても、褥の中では腰を振るのであろう」
「…そ…それは言っちゃいやです!」
信長は慌てる舞の様子を見て、目を細めて楽しそうな表情をする。
「隠さずともよい。俺は貴様のあの姿が見られれば良いのだからな」
「…信長様の意地悪」
真っ赤になりつつぼそりと舞が言うと信長は立ち上がる。
「俺が意地悪と言うなら、もう始めるぞ」
「もう、ですか…」
うなだれつつ舞は立ち、信長に叱咤されつつ舞の練習をする。
「夜を愉しみにしているが良い」
信長の不覚にもときめく言葉に、頭を軽く左右に振り、懸命に動きをなぞる。
信長の赤い瞳が蠱惑的に舞を射抜き、夜の過ごし方を既に暗示するようだった。
<終>