<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第174章 酒のさかな ― 謙信&姫 ―
酒は水と変わらん、俺にはそうとしか思えず、注がれるだけ飲み干していく。
つまみは梅干しがあれば十分だ。
「謙信様、それではからだによくありません」
謙信の楽しみを邪魔するのは舞で、謙信はじろりと舞を睨む。
「からだに良かろうが悪かろうが、おまえには関係ないだろう」
「いいえ、梅干しの摂りすぎは塩分過多、お酒の飲み過ぎは将来アルコール中毒になりかねません。せめておつまみは違うものにしてください」
「…おまえの言っている事はようわからぬ。梅干し以外のつまみにするつもりはない」
謙信は綺麗な形の眉をひそめて、舞を無視するが、舞も負けていない。
「梅干しはいけません。せめてこちらにしてください」
梅干しの皿を取り上げ、舞は傍らに置いていた煮物の入った皿を、謙信の前に置く。
「梅干しを寄越せ」
謙信がぎらりとにらみつけるが、舞も譲らず「煮物を食べてください」と言い張る。
すると謙信は口角をゆるやかに角度をつけた笑みを浮かべる。
「そこまでこれを食べろというなら、おまえが俺に食べさせるが良い」
「えっ…食べさせるって…」
「口移しでないと俺は喰わぬ」