<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第173章 新年の罠 ― 姫&政宗 ―
年が変わり、組香も新年を寿ぐものを政宗が用意してくれた。
「寿三福神香だ」
この香の証歌も教えてくれた。
初春や大黒恵比寿弁財天 並んで競ふ香の初夢
いつもながらお点前も流れるような仕草で美しくて、その姿で私は胸がどきりとする。
「どうぞ」
香炉を信長様に渡すと、信長様も綺麗な所作で香炉を持ち上げ、香を聞かれる。
私はその動作を末席からじっと眺めていたところ、これが後で政宗の気に障ったらしい。
終わって政宗が道具を片付けるのを手伝っていると、あらかた片付いたところで政宗が後ろから私を抱き締めてきた。
「…政宗?」
政宗の大きな手が、外側から内側、そしてその反対と、私のふとももを撫で回してくる。
「…政宗っ…ちょ…それ、やめ…」
私が政宗の手を自分の手を重ね、撫でるのを止めてもらおうとするけれど、その手はするりと私の押さえた手から離れ、今度は着物の上から顔からお腹を撫で回してくる。
「…も…だから…撫でるの…やめ、て…」
着物の上からと言っても、私の感じてしまうところに触れてくる政宗の手に、段々からだが熱くなってくる。
「…ん…ねぇ…まさ、むね…はぁ…っ…」
触れられ、たまらなくなって、つい漏れるため息のような吐息に、政宗はようやく口を開いた。