<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第172章 戦の後 ― 政宗&姫 ―
段々と涙声になる舞を政宗は静かに抱き締める。
「俺だって一緒に戦ったやつらを、そのまま放置していくのは本当はつらい。でも死んだ者より生きているやつのほうが大切だ。生き残った兵を休ませて、無事に待つ人の許へ戻してやらなきゃならないんだ」
抱き締められながら舞は気付く。
『そうだ、政宗は誰よりも自分の藩の人々が幸せでいられるように考える人だ…政宗が、じゃあ、私よりもっと、戦で亡くなった人への心を寄せているのかもしれない…』
「…政宗…わかったよ…一番亡くなった人をこのままにしていく事に、罪悪感を持っているのは政宗なんだね…」
政宗の、舞を抱く腕のちからがわずかに強くなり、舞の考えが間違っていない事を物語る。
「…ごめんなさい、政宗。生きている人を待つ人のところへ、無事に戻すのが一番大切だよね…」
「…あぁ…」
しばらく無言のまま抱き合う二人に、そして政宗は静かに言う。
「いつもならこんな状態なら…口付けして、おまえを押し倒して全て寄越してもらうんだけど…今日はさすがに…な…」
「…うん…」
政宗は抱くのを止め、舞を自分の横に並ばせ、肩を抱いて目の前に広がる凄愴な光景を見つめる。
「…おまえ達の犠牲は無駄にしない…」
ぼそりと小さく呟く政宗に、舞は反対にぎゅっと政宗のからだに抱き着き、私も手伝うよ、と政宗に伝えた。
<終>