第167章 生きていく　― 姫＆信玄 ―

桶にお湯を汲み、ゆっくりと背中全体に掛けていくと、無言でいた信玄様も口を開いた。

「気持ち良かったよ、舞、ありがとう」

「いいえ、どういたしまして。それでは私は…きゃ！」

背中を流し終えて湯殿を出ようと手拭いを持って去ろうとしたけれど、信玄様に腕をひっぱられそのまま裸の信玄様に抱き締められる。

「し…信玄様…っ」

襦袢、濡れちゃったな…そんな事を思っていたけれど、裸の信玄様からその考えを振り払うように艶やかな茶色の瞳が迫り、私の唇に口付けが落ちてきた。

「せっかくだ、きみも一緒に入ろう」

「…でも…っ」

色っぽく囁く信玄様の低音に耳をくすぐられ、濡れた襦袢の腰紐をさっと解かれる。

「こうして濡れた襦袢姿もからだが透けて色っぽいんだけど…」

そんな事を言いながら、張りついた襦袢を信玄様は器用に脱がしてくださる。

「…信玄様…」

脱がされた襦袢は湯殿の隅に投げられ、裸になった私は口付けを受けながら、からだが思いとは裏腹に蕩けていく。

ふ、と信玄様は私の姿を見て微笑む。

「誕生日にきみのこんな色っぽい姿を見られて、俺は幸せだな」

そう、信玄様の胸には、この時代には有り得ない手術跡が残ってるの。

病気を治すため現代へ行って手術を受け、戦国へ戻るまで一緒に過ごしたあの日々。