<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第162章 虹 ― 謙信&姫 ―
「謙信様、虹が出てますよ」
舞に声を掛けられ、部屋から出ると、確かにくっきりと七色の光が目の前に表れていた。
「ほう、これは見事だ」
つぶやくと、舞も嬉しそうな顔をして、俺を見上げる。
「謙信様と虹が見られるなんて、明日も良い事がありそうです」
愛いやつだ、舞は、本当に。
俺は舞の肩を抱いて、耳元で囁く。
「良い事は明日まで待たないと来ないのか?今日はもう良い事は無いのか?」
俺の囁きに身震いした舞は意味を察したのか、顔を赤くしながら言う。
「その、謙信様と…ふたりきりで過ごすのは、良い事と言うより、幸せな事、です…」
「ほう、良い事と言うより、幸せな事か、なかなか良い事を言う」
俺は舞の言い分に満足して頷き、更に肩を引き寄せ、舞の頭のてっぺんに軽く口付けを落とす。
「謙信様…」
「舞、ご覧。虹が消えていく」
ふと、目の前を見ると、先程はっきり見えていた虹は、うっすらと消えかかっている。
「あ、本当だ、早いですね、消えてしまうの…」