<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第160章 もう傷付けない ― 家康&姫 ―
「…ごめん…もうからかわないよ…あんたがそんなに傷付くとは思わなかったから」
俺が髪の毛を撫でながら謝ると、ようやく舞がしゃくりあげながらも口を開いてくれた。
「言って良い事と悪い事があるの…さっきのは言って欲しくない…」
「うん…ごめん…もう言わない…」
更にぎゅっと強く抱き締め、俺は舞に誓う。
「あんたの笑顔をいつでも俺は見ていたい。俺はあんたの呑気な笑顔が好きで、それが見られるなら何だってする。だからあんたをこれからは絶対泣かせない。俺は必ず何があってもあんたの許に戻り、あんたの笑った顔を見せてもらう」
俺がちからを込めて話すと、俺の胸に顔を埋めた舞はこくりと小さく頷いた。
「…絶対だよ…戻ってきてくれないと、嫌、だから、ね…」
俺が舞を怒らせた言葉、それは戦で俺が死んだら、否、いつでも死ぬ可能性はあるから、何かあったら信長様に守ってもらうように言った事。
舞は俺が死ぬとは思っていない、俺は絶対生きて舞の許に戻ってくる、と断言したから、俺はそんなのは舞の願望だろう、と揶揄(やゆ)したのが原因だ。
俺はこの乱世をようやく生きてきたからこそ、いつ死ぬかわからない事を理解している。
舞は俺とは違う考えをしていて、俺は必ず助かり、生きて自分の前に姿を見せる、と断言出来ているのが不思議だ。
でも舞がそう言うなら、俺は生きているのもしれないな。
そう思わせる程、俺は舞に惚れているだろうから。
絶対生きて戻る、もうあんたを傷付けない、俺が俺であるからこそ、愛するあんたをずっと守りたいから。
<終>