<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第158章 ごほうび ― 姫&政宗 ―
「うん」
自分でも聞いてみると、香りはふくらかな暖かな色を纏い、私のからだ全体に染み渡る。
「良い香り…」
ふぅ、と横を向いて息を吐いて、香炉を下に置く。
「政宗の教え方が上手なんだね、ありがとう」
私が御礼を言うと、政宗はにやりとし、私の片手の手首を掴み、私を引き寄せる。
「ちょっ…政宗…!」
「教え方の上手な師匠に、御褒美はないのか?」
いたずらっぽい瞳の奥に色気を含んだ顔が覗き込む。
「も、もう…政宗ったら…」
私が悶えると、更にもう片手で私のからだを抱き留め、身動き出来なくさせてしまう。
「ね、香木、焦げちゃうよ」
私が言っても、政宗はお構いなしに、私の首筋に唇を這わせる。
「もう聞いたからな。後で片付けるし、香りを空焚物にしておまえを堪能したい」
政宗の口調が低く艶めいたものに代わり、私はその情熱に流されてゆく。
香りは私達の間を漂い、やがて焦げた匂いに変化してしまったけれど、私達はそんな事に気付かない熱に浮かされて溶けていったの。
「また、教えてやるよ、こうして俺に御褒美が待っているならな」
勿論でしょ、政宗にこうしてからだを蕩かされてゆくのも、私は好きなんだから。
<終>