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<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹

第156章 くすり ― 家康&姫 ―


秀吉さんが桶を抱えて部屋を出ると、俺は薬の包みを開いて、舞に声を掛ける。

「舞、わかる?薬を飲んでくれる?」

うっすらと目を開ける舞だが、薬を飲むところまで出来そうになさそうだ。

俺は杯に薬を開け、水を入れて溶かし、それを自分で口に含み、舞のからだを少し起こして口移しで薬を流し込んだ。

少しずつ流し込み、苦い味に本能的に舞は戻しそうになりつつも、俺が押さえつけて無理やり飲ませたところで唇を離す。

大きくため息をついた舞をそのまま横たえ、ぐったりとしたその姿は痛々しかった。

「薬、飲ませましたよ。あと、女中に言って、着物を着替えたほうがいいかもしれませんね。だいぶ汗をかいているから」

「ああ、わかった。よく飲ませられたな、家康、ありがとうな」

秀吉さんに礼を言われ、俺は口付けて飲ませたとは言えず、そのまま城から御殿へ戻った。

『早く良くなりなよ、みんな、あんたの事を心配しているのだから』

俺は内心、そう思いながら、御殿に戻って、薬を作りながら思わずにはいられなかった。



翌朝、城から遣いが来て、舞の熱がさがったと秀吉さんから伝言が届いた。

「良かった」

つい、独り言ちて本音をつぶやくけれど、俺の薬が効いたなら、きっと後でどうやって飲ませたか聞いてくるんだろう。

その質問に、どうはぐらかして答えてやろうか、俺はきっと飲ませ方に気付いた信長様や光秀さんはにやにやし、政宗さんもきっと得心した表情を見せ、秀吉さんは赤くなって「妹に手ェ出すな」と怒り、名前を出したくないやつは、ぽかんとしているのだろうな、と思った。


<終>
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