<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第154章 小さな幸せ ― 秀吉&姫 ―
そんな舞を俺は守ってやると決めた。
兄として接するだけのはずが、俺達は恋仲となり、こうして俺の御殿に住む舞は、いろいろな事に挑戦し、家臣や女中達からも慕われているのが、俺には嬉しい。
「ぬか床は毎日掻き回さないとならないから大変だぞ」
俺が言うと、舞はきょとんとして、驚く。
「えっ…どうして秀吉さん、そんな事、知ってるの…?」
「え、どうしてって…知っていたらおかしいのか?」
反対に俺が聞くと、舞は信じられないといった表情をする。
「だって、政宗ならともかく…武将の秀吉さんがそんな台所の事を知っているなんて…」
「ああ、俺はもともと身分が低い育ちだって言っただろう?だから母親がぬか床を毎日掻き回していたのを見ていたからな」
「そうなんだ…じゃあ、私も毎日かき混ぜて、美味しいぬか床にしておくようがんばるね」
「ああ、楽しみにしてる」
舞が漬けるぬか漬けは、きっと美味いだけじゃないだろう。
それは舞から感じる、俺を好きという気持ちが溶け込んだ味だろう。
この時代で生きる事を決めた舞を、俺は生涯掛けて守ろう。
舞が笑顔でいてくれて、俺の隣で楽しく過ごせる世にしてみせよう。
小なすを口にしながら、新たな気力が沸いてくるのを感じる。
この小さな幸せを守るために、俺は前に進むだけ。
<終>