<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第148章 伽羅 ― 姫&政宗 ―
政宗が身じろぎし、私の額に乗せた手拭いを取り換えてくれると、着物に焚きしめた香がくゆる。
少しずつ思い出せる、この香りは政宗の好きな伽羅の香り。
いつか、私が政宗に、この香りが好き、と言ったら、とても喜んでくれたっけ。
「この香りだけじゃなくて、俺も好きになれよ?」
その時そんな事言ったけれど、勿論、私、政宗の事が大好きなんだよ。
まだ告白してなかったっけ?もう言ったっけ?でも政宗は気付いてそうだね。
クユルカオリはほんのりと部屋全体に漂い、心が癒されてゆく。
政宗の香りは政宗自身に包まれているような感覚に陥るの。
くゆる伽羅に私は政宗に包まれている幻想をみる。
熱が下がったら、政宗に告白して。
私を離さないで、強く抱き締めて政宗から離れたくない。
そんな事を言ったら政宗の情熱的な口付けが落ちてきて、その後あのたくましいからだが私のものになるのかな。
とにかく全ては元気になってから、だよね。
回らない頭で、いろいろ考えようとしても、まとまらない。
今は政宗の香りを頼りに、一緒にいてくれる政宗の手が心地良くて、離れたく、ない。
早く良くなるから、今はここで一緒にいてね。
難しければ、せめて、政宗の香りをクユラセテ。
<終>