<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第148章 伽羅 ― 姫&政宗 ―
クユルカオリ-この覚えのある香りは…誰?
目を開けてみるけれど、目が回って気持ちが悪くなり、開けていられない。
額に冷たい手が乗り、それが離れると、濡らした手拭いらしいものが置かれた。
冷たくて、気持ちが良い…私は一体どうしたのだろう?
香りの持ち主が動き、更に燻る、覚えのある香…
どこで聞いたのだろう、覚えがある、甘くて清しい、この香りは…
「…まさ、むね…」
ようように香りの持ち主の名前を呼ぶ。
「お、気分はどうだ、舞が急に高い熱が出て、俺の御殿で横になってるんだぞ」
ひょい、と呼ばれた人物の顔が表れ、いつもの艶のある低い声が聞こえた。
そう…私、政宗の御殿に来ていて、熱を出したんだ…
「まだまだ熱は高いからな、下がるまでこのままここで養生していけよ?」
ああ…熱、まだ高いんだ…だから目が回るのね…
「…まさ、むね…ありが、と、う…」
やっとの声で御礼を政宗に告げると、政宗はまたひょいと顔を出して言う。
「今、そんな状態で礼を言われても嬉しくないな。治ってから口付け寄越せよ?」
ああ、政宗らしいな、と私は内心おかしくなるけれど、まだ笑うところまでいかない。