<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第15章 瞬間 ― 秀吉&姫 ―
舞が本能寺で御館様を助けた、と信長様がその娘を安土城へ連れて来た。
身元のはっきりしない娘を城に住まわせ、面倒までみるとは、御館様は何を考えているのか。
しかし、城での生活に慣れてきた舞を見ていると、悪い様子は見受けられず、むしろ俺達に溶け込もうと、必死に毎日を過ごしているような様子を伺うようになった。
「舞」
よろよろと、何かを持って、城の廊下を歩いているところを呼び掛ける。
「はい、何ですか?秀吉さん」
舞が振り向くと、持っている大量の本の山がゆらゆら揺れた。
「どうした、その本?」
「三成くんが読んだ本を、書庫にしまっておくよって請け負ったら、こんなに有ったんです」
やはり、三成の借りた本か。
俺は舞が持つ本の中からほとんどを持ち、一緒に書庫へ歩いてやる。
「ありがとうございます、秀吉さん」
ふわりと笑うと愛くるしくて、俺の心の臓がどきりと音を立てる。
「いや。それより舞も無理に一度に行う事はないんだぞ。これらの本だって、一度に全て返しに行かなくても、数回に分けて返しても問題はないんだからな」
諭してやると、ああ、そうか、という顔をする舞。