<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第145章 甘い囁き ― 姫&信玄 ―
「おや、舞、顔が赤いが熱でもあるのかい?」
さらりと言って、私の額に手を当てて来る信玄様。
でも私の顔の赤さは熱ではなくて、信玄様があまりにも色っぽくて素敵だから。
信玄様の整った真剣な顔が私の顔を覗きこむから、余計に顔に熱が集まってくる。
「舞、きみは何て美しい…今すぐ食べてしまいたいな」
額に当てた手を頬に滑らせ、信玄様は私の頬を撫でると、私の動きがどきりと止まる。
信玄様の眼差しが私を捕まえ、私はその瞳の強さに絡めとられて動けなくなる。
ずるい、信玄様、余裕のある振る舞いで、私から自由を奪う。
「信玄様…」
艶めいた表情を内側に秘めつつ、私を別世界へ誘う信玄様に、息も絶え絶えになる。
私の秘密の柔らかな場所を、信玄様はそっと溶かして、私のからだは信玄様の動きに合わせて海に浮かぶようにゆらゆらと揺蕩う。
「舞、ああ、なんて良い表情だ。他のおとこには見せられないな」
信玄様の、私を蕩かすような声が耳に染み渡り、私はますます全身で信玄様を受け止める。
私をどこへ連れて行くの?
からだがいうことをきかず、震えが止まらず、意識が遠くにいきそうで、必死に信玄様に掴まって、私のからだが感じた事のない感覚を求めて、飛び立っていくわ。
信玄様の甘い囁きは毒ね。
だって、私は違う世界へ旅立つ事を覚えてしまったんだもの。
<終>