<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第145章 甘い囁き ― 姫&信玄 ―
甘い囁きは貴方のお得意。
「信玄様、もう、いつも、そんな甘い言葉を言って歩いているんですか?」
私は呆れて目の前の信玄様を見る。
毎日のように、どこから出てくるんだろうというくらい、甘い言葉が出てくるの。
「そりゃ、舞という美しい天女が目の前にいるのだから、言わずには言われないだろう?」
「もう…からかうのやめてくださいな」
私は顔が赤くのを止められずにいるまま、何とか言い返す。
「おや、俺はからかってなんていないんだけどな。いつでもきみには真剣だよ」
「信玄様…」
どうしてこんなにさらりと、真剣と言いつつ、実はからかいの言葉が出てくるのだろう。
本当、信玄様の大人の余裕には適わないな。
「ほら、拗ねてないで、可愛い顔が台無しだ。ああ、でも拗ねてるきみも可愛いな」
私がむくれているのを見て、信玄様がまた甘い言葉で私を包んでくる。
「拗ねてませんよ。信玄様こそいつまでも私でからかうのやめてください」
「おやおや」
信玄様は肩をすくめて、私を横目で見るけれど、その流し目は色っぽくて、本当にどきどきしてしまう。