<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第141章 言えなかった想い ― 姫&顕如 ―
「顕如さん、それ本気で言ってますか?」
顕如さんの言に、私は抵抗を試みる。
何とか復讐を辞めてもらえないか、信長様を死に至らしめる事を考えるのを止めてくれないか、私はいろいろ言ってみるけれど、顕如さんはつらそうな表情を浮かべるだけ。
やはり、私の話しでは説得は出来なかった。
馬を連れてきた人がいて、私はその人によって安土の信長様へ送られる。
「舞、息災でな」
顕如さんの言葉に、私はたまらず顕如さんに抱き着く。
「生き抜いてください…私のために…」
私の言葉を聞かなかったように、顕如さんは私を引きはがし、私から数歩離れた。
「顕如さん、私、絶対、貴方のところへ戻ります…!」
「舞、それは駄目だ」
私が叫んだ言葉に、顕如さんは首を横に振る。
「私は鬼に戻る。おまえは安土で守られ幸多く過ごすが良い…行け」
私が乗せられた馬が、顕如さんの命令で走り出す。
「顕如さん…私、貴方の事が…」
私の想いは風に消されて、伝えられなかった。
『誰よりも心優しい貴方を愛してます』
私の想いは、安土に戻っても、きっと、変わらないだろう…
<終>