<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第139章 仲直り ― 義元&姫 ―
「どうされました?どうぞ」
寿桂尼に声を掛けられ、はっとする舞は手に香炉を持ち、香りを聞く。
胸いっぱいに香りを含み、ゆっくりと息を吐く。
香りが部屋の中に淡く広がる。
「良い香りですね、寿桂尼様」
香炉を寿桂尼に戻して舞は言い、寿桂尼は柔らかな笑みを浮かべ、舞を見る。
「ほほ…舞殿はどうも、穏やかな笑顔とは遠い顔をしていますね」
「寿桂尼様には適いません」
舞は苦笑して寿桂尼に話す。
「義元さんとけんかをしたんです。お互い強情を張って、仲直りがまだ出来てません」
それを聞いた寿桂尼は、くすくす笑い出す。
「あら、まぁ、そういう事なのね」
寿桂尼の笑い声に舞は他人事だな、とちょっとむくれる。
「舞殿、ごめんなさいね。でもこういう事は素直になったもの勝ちですよ」
「…どういう事ですか?」
むくれる舞の顔に気付いて寿桂尼は言う。
「私は夫、氏親(うじちか)殿とけんかをした事はありません」