<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第125章 出発 ― 姫&幸村 ―
明日が呼んでいる、明日が待っている、何に呼ばれて、待たれている?
今迄の事が思い出になっても、前に進まなくちゃならないから。
「もう、行くのか?」
「はい、今迄ありがとうございました、お世話になりました」
「気を付けていけ。おまえならどこでも元気でやっているだろうがな」
「謙信様、それ、おまえならって余計な一言ですよ」
私が少しむくれて言うと、謙信様は珍しく笑みを浮かべて私の頬をひとなでする。
その表情は少し困ったような、残念がっているような、そんな表情だった。
「まぁむくれるな。おまえならいつも笑顔でいるだろう、という事だ」
「謙信様…信玄様も佐助くんもお世話になりました」
私は三人に向かって頭を下げる。
「全く、天女を幸村にさらわれるとは思わなかったな。ま、元気でいるんだな」
「信玄様、舞は天女じゃなくて、佐助と同郷のただの町娘ですよ」
幸村は謙信様と信玄様に反論し、私はその姿がおかしくてくすくす笑ってしまった。
「舞さん、元気で。ま、幸村と一緒だから大丈夫だと思うけれど」
「佐助くん、ありがとう。佐助くんも元気でいてね」
そう、幸村と私は、春日山城を出て、幸村の故郷へ行くのだ。