<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第116章 てんとうむし ― 幸村&姫 ―
晴れた日、しゃがんで地面を見ている舞に声を掛けた。
「何、見てるんだ?」
「あ、幸村。見て、てんとうむし」
「本当だ」
舞が指差した先には、葉先をよじ登る小さな七星のてんとうむし。
「てんとうむしは益虫なんだよ」
「なんだ、益虫って?」
俺がわからないと言ったら、舞は教えてくれた。
「益虫ってね、悪い虫を食べてくれる虫の事。農作物を食べる虫がいるでしょう?
それらを食べてくれるのが益虫なんだよ」
「へぇ、そうなんだ」
俺は指を差し出し、てんとうむしを指に昇らせる。
舞に教えてもらった事は小さい事でも覚えておこう、と俺は思っている。
未来から来た舞の知識は、今の時代、知らない事も多い。
てんとうむしの事もたぶん、知らない事だろうから、将来俺の生まれ故郷に戻った時、そこに生きる人達に教えてやりたいんだ。
小さい虫だけど、生きて行くために有益な虫だと初めて知った、てんとうむし。
俺の指を昇り、やがて指先から飛んで行った。