<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第114章 金平糖奪還 ― 姫&信長 ―
私もじゃんけんくらいなら負けないから、と意気揚々と宣言する。
そして一度きりの勝負。
「じゃーんけーんぽーん」
私はぐーを出し、信長様はぱーを出した。
「え…」
私は自分の手を見つめた。
信長様はにやりと笑みを浮かべ、してやったりと私に言う。
「俺が勝った。さぁ金平糖の瓶を寄越せ」
「どうして、どうして、じゃんけんすら信長様が勝っちゃうの!?」
私が驚いて叫ぶと、信長様はごく当たり前のように言った。
「貴様、わかっておらぬのか。ぐーの握りこぶしはやりやすいであろう?
反対にぱーの手を広げるのは『手を広げる』というちからがいるであろう?
そうすると初手というのは、知らずに楽な姿勢になるきらいがあるのだ」
「うへぇ…」
どうして戦国時代の人に、そんな事を教えられなきゃならないのよう、と言いたくなるのをこらえ、金平糖の瓶を仕方なく信長様に渡す。
信長様は本当に嬉しそうに瓶を受け取ったので、その笑顔に私も仕方ないか、という気持ちになってしまった。
「…え、ん…っ」
最後に、金平糖を寄越した褒美だ、と信長様から口付けも付いてきたけれど、ね。
<終>