<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第11章 軍神の月 ― 謙信 ―
秋の色は切なさを含んで舞の周りを染めていく。
俺は何を欲している?
俺はどうしたい?
夢の中で、伊勢姫が問い掛ける。
貴方は幸せ?
ああ、舞がいる限り、幸せを掴んだと思っている。
伊勢姫、おまえを幸せには出来なかったのは悔恨の極みだが。
伊勢姫は夢の中で俺に微笑みかける。
-そんな事ないですよ、ありがとう、貴方は私に一時でも幸せをくれた。
-これからは今、側にいるかたを幸せにして。
杯にも月が宿る。
俺は宿った月を飲み干す。
全てを飲み込み、軍神として、走り続ける。
側に舞がいる限り。
舞を守る為。
月よ、その力を俺に寄越せ。
俺が軍神であり続ける為に。
月の光が俺を軍神として生まれ変わらせ、新たなちからを得て、守るものを守るため、ひたむきに俺は先へ先へと向かうのだ。
<終>