<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第111章 弱い、から、強く ― 家康&姫 ―
「俺は弱い。もっとちからを得たい」
俺はこの、揺らぐ不安定な心情を舞に吐き出す。
弱い、強い、そんな感情から俺を引っ張り上げる言葉を俺に掛けて欲しい。
弱った俺の心を包み込む、舞のぬくもり。
ふわりと俺を包み込む、舞の優しい両腕。
「家康は強いよ、弱くなんか無いよ。家康のその強さは、いつか必ず大きな時代に繋がるよ」
どういう事かわからないけれど、舞の言葉は俺を奮い立たせる。
「自分が弱いと思えるなら、それは強くなる余地があるって事でしょう?」
舞は弱い俺の心を強くしてくれる。
あんたが俺の側にいてくれて良かった。
今、目の前に居る舞の芯の強さに、俺は導かれる。
もう、迷わない。
あんたが俺にちからをくれる。
屈辱の時から引きずり出して、俺の心を強くしてくれる。
弱い舞なんていらない、と思ったけれど、今となっては舞と巡り合えた事に感謝する。
これからも、俺の側で、俺と共に生きてくれると約束してくれた舞。
俺は舞に手を差し出し、出された小さな手をしっかり握り、二度と離さないと笑って舞を静かにそっと、抱き締めた。
<終>