<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第108章 久方の愛 ― 姫&佐助 ―
きみは、わがままなくらいがちょうど良い。
そう言ったのは佐助くん、貴方だよ。
安土で暮らす私と、敵地春日山で生きる佐助くん。
時々安土に潜入してきて、私に会いに来てくれるから私も安心出来る、一緒に飛んできた現代人仲間の佐助くん。
春日山の上杉謙信の腹心として時には安土の武将達と敵になってしまうものの、生き抜いて戻って来てくれる、私の、言ってないけれど、実は大切な人。
コツンと、上から来たのを知らせる音がし、私はどうぞと声を掛ける。
天井板が外れ、するりと佐助くんは長身を音もなく私の部屋へ飛び込ませる。
「久し振り…元気だった?」
私が声を掛けると、佐助くんは口元の布を下して、あまり表情を変えないけれど、少し微笑んでいるように見えた。
「舞さん、どうしたの?泣きそうな顔、してる」
佐助くんは私の頬に片手を伸ばして包み込む。
私は頬に置かれた佐助くんの手に、更に自分の手を重ねる。
「…ほんと、泣きたいよ。長い間会えなかったから、生きてるのかどうか…心配だったんだから」
「ごめん、舞さんに前に会った時に言えれば良かったのだけれど、安土からも春日山からも離れた場所に行っていて、連絡手段が全く無かったんだ。戻ってきてすぐ会いに来たんだけど、心配掛けてごめん」