<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第103章 誤解 ― 姫&光秀 ―
驚いて名前を呼んだけれど、光秀さんはそのまま私を抱き締めるだけだった。
「最後まで俺の話しを聞け。
あのおんなは俺の斥候で、信長様の妹の市様の許に普段は女中として仕えている。
時々ああして俺の元へ、今の状況を報せに来る事になっているのだ。
更にあれは、市様に危険が無いよう、何かの際はあのおんなが命を張って、市様をお守りする。
だから、俺が斥候を大切にするのはわかったか?」
『そういう事なんだ…あの女性はスパイをやっている人だったのね…』
光秀さんのお相手の女性と思っていたのが、違っていた事に私はほっとする。
胸の中でそれがわかったのか、光秀さんは私の顎をすくい、私の顔をまた、見る。
「先程の情けない顔から、良い顔に変わったな」
「…どういう事…」
「先程、俺が大切なおんな、と言った時、おまえが泣きそうな顔をしていた。
ところが俺があのおんなは斥候だと言った途端、瞳を輝かせて嬉しそうな顔になった。
おまえは顔に感情が出過ぎて、斥候には向かないな」
光秀さんはくっと笑い、そして私に口付ける。
「ん…っ」
口付けている間に光秀さんの片手が私の帯を解き、着物の袷が乱される。
唇を離した光秀さんは、私に言う。
「俺が、今、一番大切なのはおまえだ」
「…嬉しい、です。私もです…」
乱れた着物のまま私は光秀さんにぎゅうと抱き着き、私達は再度口付け、そのまま二人で愛をする事となった。
<終>