<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第102章 手伝いのごほうび ― 秀吉&姫 ―
俺だけのお姫様、そう呼んだら舞は真っ赤になって嬉しそうに破顔した。
「ったく大丈夫か?これぐらいすぐ俺を呼べよ?」
「うん、ありがとう、秀吉さん」
俺達は今、舞の部屋で、舞の言う『模様替え』とやらをしているところだ。
全くそんな事をしているなんて気が付かず、所用合って舞の部屋を訪れたら、舞が重たい棚を一人でずるずると動かそうとしているところに出くわし、そのまま俺が手伝っている、という流れだ。
「これはここに置いて、こっちはどこに置くんだ?」
「あ、それはそのまま。秀吉さん、あそこにあるのをそっちにお願いします」
「あぁ、わかった」
手際良く俺は物を移動させ、俺が手伝った事で模様替えとやらはすぐ終わった。
「秀吉さん、本当に忙しいのにありがとう」
舞は俺にお茶を淹れながら、心底悪かったように礼を言う。
「気にするな。それより駄目じゃあないか、一人で重い物を持って、畳を引きずろうなんて。
畳が傷むし、なにより、舞に何かあったらどうするんだ?」
「ごめんなさい、皆さん忙しいだろうし、これぐらい自分で出来ると思ったんだもの」
「実際は一人では手に余っただろう?」
俺はお茶を淹れてくれた舞の頭を、ぽんと軽く叩くように自分の手を頭に乗せ、すぐ外さずわざとそのままで居た。