<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第101章 文字比べ ― 政宗&姫 ―
「政宗、くれた文が読めないよ」
舞から抗議を受けた。
「おまえ、字が読めないのか?」
なんだ?信長様から舞は500年後の時代から来たと聞いていたが、未来では字は読まないのか?
「違うよ、この、うねうねした字は読みつけないの。
こういう字は未来では使わないもん」
そう言って唇をとがらせる舞の表情は愛くるしい。
「へぇ、じゃ、どういう字を使うんだ?」
俺が反対に問うと、舞は首を傾げて考えてから言った。
「一人で書いても比べようが無いから、政宗、何か題をちょうだい。同じものを書いて比べてみようよ」
「ふむ、そうしたら、難波津だな」
「なにわづ?」
「難波津に咲くやこの花冬ごもり今は春べと咲くやこの花。幼な子が字の練習に使う歌だ」
「わかった。じゃ、見ててね」
おぼつかない手つきで筆を持ち、カクカクさせながら字を書いていく舞。
文字を繋げず、一つ一つ離して書いているのがわかる。
書き終わった文字を見て、俺はふぅむと自分の顎に人差し指と親指を掛けた。