<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第100章 魔法 ― 姫&信玄 ―
「でも本当に甘いのは、舞、きみだよ」
「信玄様…!」
私は顔から火が出そうなくらい恥ずかしい、けれど、本音は嬉しい。
「何をおっしゃってるんですか?」
強気の発言で冗談でしょう、と言ってみるけれど、返事は全く違うものだった。
「いつもきみを味わっていたいんだけどね、本当は」
からだ全体がぞくりとするような甘い言葉を耳に囁かれ、私の心はときめく。
「…いつでも食べてくださって、良い、です、よ…」
私は魔法に掛けられて、信玄様の子羊になる。
甘い吐息と、優しい仕草で、私をからだの芯から蕩かして。
貴方の声で私を魔法に掛けて、貴方から逃れられないように、ううん、逃れたくないのが本音なの。
だから信玄様、私を貴方という海へ連れて行って溺れさせて。
「舞、愛してるよ、ずっときみだけを愛してる」
信玄様に言われたら、私のからだは腰から砕け、溶けてしまうわ。
「もっと、私に、魔法を掛けて。信玄様以外の人は目に入らないようにして」
私のおねだりに、信玄様はゆったりと笑みを浮かべ、私へ魔法を掛けるがごとく、愛してくださるからだを深く、より一層深々と沈めていったわ。
<終>